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オンコリスバイオファーマ株式会社 上場記念特別連載(1/3)

時価総額300億円(※1)。本日、東証マザーズにオンコリスバイオファーマが上場を果たした。
HIV感染治療薬で大手製薬会社から総額290億円のマイルストン契約を勝ち取ってから3年、堂々たる上場だった。

ただ、その華々しい上場の裏側で浦田泰生社長は、資金繰りに追われる10年間を過ごした。

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毎日カレーで資金切り詰め

「もっぱら週末の日課はカレーを煮ること。一週間分をまとめて煮込んで、毎晩食べる」(浦田社長)

そうまでして資金を切り詰めなくては社員の給与を工面できなかった。

同社はスタートこそ好調だった。設立からほどなくして、VC17社から、およそ5億円を調達。
その後も調達を繰り返し、最終的にVC27社から46億円を調達した。前職JT(日本たばこ産業)で抗エイズ薬の開発に成功した実績と、バイオベンチャーブームに沸く時代の後押しがあった。

そして開発は進み、臨床試験を実施していたフランスから「10日間で97%の血中HIVが消える」という抜群のテスト結果があがってきた。

しかし、ライセンス契約の交渉先からは追加の試験データを要求された。
追加の試験を実施するためには新たな資金も必要だった。

計画がずれれば、バイオベンチャーの資金繰りは途端に悪化する。
想定外の事態にVCとの追加資金調達の交渉は難航した。
そして、みるみるうちに手元の資金は減っていった。

「この薬は間違いなく物になる」(浦田社長)

シーズ(薬の種)から市販の薬品になる確率は約2万分の1という世界。

「HIV感染で苦しむ患者さんの為にも、ここまできて諦めるわけにはいかない」(浦田社長)

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待ちに待った大型契約

逼迫した状況のなか、役員3人、カードローンで100万円、200万円と足りなくなるごとに資金を掻き集めては社員の給料を工面し続けた。

「役員全員報酬をゼロにしても社員への給与だけは遅れないで払おうと決めていました」(浦田社長)

半年近く役員報酬が一円もないこともざらにあった。
飲み会はもっぱらカップ酒。会社近くの自販機前で酒宴をはるのがその頃唯一の楽しみだった。

そして2か月後、世界第12位の製薬メーカー、ブリストル・マイヤーズ・スクイブとの総額290億円におよぶ大型契約が待っていた。

「契約が決まるまでヒヤヒヤでした。契約締結が先延ばしにされれば、その瞬間、会社は潰れる。
 借入はもう限界、口座にその月の給与を払う資金すら残っていなかった」(浦田社長)

米国でオンコリスバイオファーマとの契約是非が決議される役員会は日本時間の未明。
その夜、「よし、結果が出るまで会社で待機しよう」浦田社長は役員に呼び掛けだ。

一旦夕方に帰宅した役員たちが終電で出社し米国からの報せを待った。
待ちくたびれた朝4時、米国で張り付いていた社員から電話が入った。

「社長、通りました、290億円、通りましたよ」

7年間の苦労が報われた瞬間だった。

上場による調達資金で開発を加速

あとは、上場への道を突っ走るだけだった。
3年間の準備を経て2013年10月31日、東証マザーズへの上場が承認された。

同社は今後、上場で調達した60億円を元手にHIV感染治療薬や抗癌剤の開発を次々と推し進める。

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世界のHIV感染者数は3,530万人(※2)、毎年200万人を超える人数が新たに感染しており、現在のところ、一度感染したウイルスを取り除く方法はない。

「これからですよ、見ていてください」

浦田社長は快活に話した。

(第二話につづく)

※1:12月6日公開初日時点の終値3,530円より換算
※2:2012年、国連合同エイズ計画の調査による